任天堂 高まるVTuber業界への影響力 ホロライブ 著作物利用契約 “スピード締結” の波紋

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任天堂は8月1日、バーチャルYouTuber (VTuber) 事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社などと著作物利用に関する包括契約を締結しました。

任天堂 ホロライブのカバー社と著作物利用に関する包括契約を締結

今回の任天堂とカバー社による契約締結を巡り、様々な波紋が広がっています。

任天堂/ホロライブプロダクション

6月1日、任天堂はバーチャルYouTuber (VTuber)/バーチャルライバーグループ「にじさんじ」などを運営するいちから株式会社と著作物の利用に関する包括契約を締結しました。

これによりいちから社は任天堂のゲーム著作物を利用したコンテンツ投稿と収益化が可能となり、にじさんじ所属タレントは任天堂ゲームの生放送配信を公認を得た形で行う事が可能となりました。

任天堂 にじさんじのいちから社と著作物利用に関する包括契約を締結

一方この任天堂といちから社の契約締結により、にじさんじ以外の企業系VTuber事務所及び運営企業が任天堂による許諾を得ず収益化配信を行っているとの指摘が浮上。特ににじさんじと並ぶ大手事務所であるホロライブは批判の矢面に立たされる事となり、カバー社が謝罪する結果へと至りました。

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こうした一連の出来事により、にじさんじのいちから社が任天堂との契約締結へと至ったのは「かねてより著作物利用において誠実かつクリーンな対応を積み重ねてきた取り組みが任天堂に認められた」とする見方が一部で浮上、故ににじさんじ以外のVTuber事務所が早期に任天堂との包括契約を締結するのは厳しいのではないかとの見方もありました。

実際、にじさんじ以外のVTuber事務所・グループは任天堂の個人向けガイドラインに適合する形で任天堂ゲームの配信へとこぎつける形を取っていました。

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しかし、任天堂といちから社による契約締結から僅か2ヶ月後となる8月1日、任天堂はホロライブプロダクションを運営するカバー社、.LIVEを運営するアップランドなどと新たに著作物利用に関する包括契約を締結しました。

特に任天堂とカバー社による包括契約がいちから社の契約発表から僅か2ヶ月で “スピード締結” された事は驚きに値するものであると言えるでしょう。

カバー社はホロライブにおける無許諾配信問題を受け、著作物利用において杜撰であるとするイメージが拡散しつつありました。よって任天堂をはじめとするゲームメーカー各社がカバー社と早期に著作物利用の包括契約を締結する可能性は低いのではないかとの見方もありましたが、この度それが覆された形となりました。

近日カバー社はホロライブにおける新たな著作物無許諾利用の問題により厳しい批判を受けていた最中であっただけに、今回の任天堂との著作物包括契約 “スピード締結” は同社及びホロライブの一種の “狡猾さ” “悪運の強さ” をも呼び起こさせるものであり、良くも悪くもこれまで様々な問題により隆盛から丸1年と経たず衰退し表舞台から姿を消していった他社及び事務所・グループとは異なる「強かさ」を備えたものであるように映るでしょう。

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一方、にじさんじのいちから社は今回の動きを複雑に受け止めている可能性があるでしょう。著作物利用に関する問題を引き起こして間もない他社及び事務所・グループが僅か2ヶ月で自社と同じ包括契約を締結するのは決して気の良いものではないのが内心の思いでしょう。

更に今回の任天堂の動きは、いちから社がVTuber関連企業初の任天堂との包括契約締結へと至った理由が「かねてより著作物利用において誠実かつクリーンな対応を積み重ねてきた取り組みが任天堂に認められた」からでは無かったとの見方をも示唆しかねないものであり (なお実際のにじさんじが過去から一貫して著作物利用においてクリーンであったとするエビデンスはありません)、結果的にこの様な形で「VTuber関連企業で唯一の任天堂との著作物利用包括契約締結先」という看板を失うのはある種の失望をも禁じ得ないものであるとも言え、ビジネス上の競争の結果とはいえ心中を察するものがあります。

今回の任天堂による一連の動きで見えてきたのは、現在のVTuber業界の重要なプレイヤーとして任天堂の存在感がかつてないほど高まっている事ではないかと考えられます。

VTuber業界はかつての “四天王” を中心とした時代へ別れを告げ、新たな時代を迎えています。ホロライブ・にじさんじといった事務所だけではなく、今回の任天堂やVTuber事業への本格参入を図る日本テレビといった新たなプレイヤーの影響力がより高まってきている事実を私たちの目の前に突きつけます。

今後、より大きなうねりが起きる─今回の任天堂とVTuber各社とを巡る一連の出来事はその先触れにすぎないのかもしれません。

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ホロライブ/にじさんじ
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