ホロライブプロダクションの未来はどこにある カバー社 問われるVTuber事務所運営の資質

国内外最大手の一角であるバーチャルYouTuber (VTuber) 事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバー株式会社について、今年2020年 (令和2年) 6月以降より相次ぐ不祥事を受けエンターテイメント系の事務所を運営する企業としての資質に著しい疑義が生じています。

ホロライブプロダクションのカバー社 総額約7億円の資金調達を実施

相次ぐ不祥事 もはや看過出来ず

任天堂ゲーム著作物無許諾利用問題

任天堂/ホロライブプロダクション

カバー社は6月5日、任天堂ゲームタイトルの生配信プレイ動画を巡り無許諾による公開を行っていたとして、お詫びと今後の対応について発表しました。

ホロライブのカバー社 任天堂ゲームタイトルの無許諾生放送配信を認め謝罪

任天堂 にじさんじのいちから社と著作物利用に関する包括契約を締結

これはVTuber/バーチャルライバーグループ「にじさんじ」を運営するいちから株式会社が任天堂の著作物利用に関する包括契約を締結した事で他社運営の事務所における著作物利用の状況を指摘する声が浮上。特ににじさんじと並ぶ最大手であるホロライブプロダクションが利用許諾を得ないまま収益化による生放送配信を所属タレントに行わせている (許諾済みであるとする「虚偽の説明を所属タレントに行っている疑惑も浮上) 疑いが指摘され、カバー社が疑惑を認め謝罪する事態となりました。

結果的にカバー社は任天堂の許諾を得ず、任天堂のゲームソフトから不当に利益を得る状況を黙認し行ってきたと白日の下にされた事で、ゲーム業界やゲームユーザーからも同社の問題を指摘する声が挙がりました。

余談ではございますが、本サイトの運営及び記者においては長年任天堂やゲーム業界の情報に関わってきた者が多く、この不祥事については大変な憤りを覚えるものでありました。

P2y.jp 記者団

なおカバー社は8月1日、任天堂と著作物利用に関する包括契約を締結しています。

任天堂 ホロライブのカバー社と著作物利用に関する包括契約を締結

所属タレントに正しい実情を伝えず、問題が表面化後に謝罪。タレントに活動休止などを課す一方、谷郷元昭社長率いる経営陣や運営管理者の責任は曖昧とし幕引きを図る。こうした姿勢は次の著作者削除問題で更に表面化していくことになります。

カプコン「ゴーストトリック」著作者削除問題

大神ミオ カプコンのゲームソフト「ゴーストトリック」生配信動画が権利者削除に

7月30日、大神ミオによるカプコンのゲームソフト「ゴーストトリック」の生配信プレイ動画がカプコンからの著作権侵害の申し立てにより権利者削除されている事が分かりました。

大神ミオ カプコンのゲームソフト「ゴーストトリック」生配信動画が権利者削除に

「ゴーストトリック」は生配信プレイ動画などの公開が禁止されるなど厳しい著作権管理がなされており、今回の大神ミオによる動画もカプコンからの著作権侵害の申し立てにより「権利者削除」されました。

大神ミオ カプコンのゲームソフト「ゴーストトリック」生配信動画が権利者削除に

著作権侵害の申し立てによる「権利者削除」はチャンネルオーナーに重大な警告を与えるものであり、警告を複数回受けると収益化に影響を及ぼしたり、生放送配信が90日間禁止されるなどのペナルティーが課せられます。更に著作権侵害の警告を3回受けた場合、アカウントと関連付けられているチャンネルが全て停止されるほか、全ての動画が削除され、新たにチャンネルを作成する事も出来なくなり、事実上の永久追放処分を受ける事となります。

著作権侵害の警告に関する基礎知識

YouTube ヘルプ

カバー社は同日16時、大神ミオのチャンネルにおける「権利者の許諾を得られていない著作物使用に関するお詫び」を発表。大神ミオに活動休止を課す一方、同事務所運営のYouTube公式全チャンネルの動画の多くを非公開にしました。

このうち大神ミオの所属する女性タレント部門「ホロライブ」では約1万2000本もの動画が非公開となり、実に全動画の約86%が一時的に姿を消す事に。これらは9月29日現在も完全復旧には至っておらず、同社が長らく他社著作物において杜撰な取り扱いを行ってきた事が明らかとなりました。

ホロライブ YouTube全チャンネルの動画約1万2000本を非公開に 全体の約86%に及ぶ

カバー社 ホロライブにおける「権利者の許諾を得られていない著作物使用に関するお詫び」を発表

大神ミオ 1ヶ月間の活動休止に関する説明を生放送配信

大神ミオは9月5日に活動休止から復帰しましたが、今回も同社の経営陣や運営責任者の責任は曖昧とされました。大神ミオは前述の任天堂ゲーム著作物無許諾利用問題が発覚した6月上旬から7月にわたって、ゲームプレイ配信が制限される状況下における独自企画の開催に尽力するなど同事務所に多大な貢献をしていただけに、同社の所属タレントに対する姿勢にも不信が生まれるものとなりました。

大神ミオ 1ヶ月間の活動休止に関する説明を生放送配信

大神ミオ 9月5日復帰へ 関係各所との協議・対応が完了しライブ配信が復活

“1つの中国” 支持 政治的姿勢表明問題

ホロライブのカバー社 中国向け声明で “1つの中国” 支持 政治的姿勢表明に非難相次ぐ

そして9月27日、同社は所属タレントがYouTube側の仕様である「台湾」の記述のあるアナリティックスデータを紹介した事などに中国の一部視聴者が反発したことを受け、中国の動画プラットフォーム「bilibili (ビリビリ/哔哩哔哩)」上で公開した声明文にて台湾 (中華民国) を中国の一部地域であるとする中国共産党政府の「1つの中国」の原則を支持すると表明しました。

更に該当の生放送配信を行った桐生ココ赤井はあとを3週間の謹慎とする一方、経営陣や運営管理者の責任を曖昧とするなど、またしても「所属タレントのみに責任を押し付け、幕引きを図る姿勢」が明らかとなっています。

ホロライブのカバー社 中国向け声明で “1つの中国” 支持 政治的姿勢表明に非難相次ぐ

これら不祥事におけるカバー社の姿勢は、エンターテイメント系の事務所を運営する企業としての資質に著しい疑義を生じさせるものとなっています。

にじさんじのいちから社 批判受け止め刷新

一方で、ホロライブプロダクションと並ぶ最大手のVTuber/バーチャルライバーグループ「にじさんじ」を運営するいちから株式会社の運営姿勢がクローズアップされつつあります。

かつてのにじさんじは所属タレントの言動などが度々問題となるなど、幅広く支持されるとは言い難い、むしろVTuber業界を破壊してしまうのではないかとの厳しい批判にさらされた時期がありました。

同グループが切り開き今や主流となっている「2Dモデルによる生放送配信スタイル」は当初拒否感が強く、またニコニコ生放送系配信者出身と目される所属タレントへのアレルギーやネガティブなイメージも根強く付き纏い、同グループ所属タレントもいちから社も理不尽とも言える批判にさらされ続けた時期が続きました。

「にじさんじをVTuber扱いしてはならない」…そんな声が当たり前に飛び交っていた時期もあったほどです。

しかし、それはにじさんじといちから社を「(法的にも道義的にも) 正しい姿勢で取り組む」方向へと導きました。所属タレントのマネジメント強化と共に彼らを大切にする姿勢、他社著作物に関するグレーゾーン的利用を改めるなどの「陰ながらの地道な取り組み」…批判を真摯に受け止め地道な取り組みを行ってきた結果、かつての悪いイメージを徐々に払拭、今日の成功へと至る事が出来たと言えます。

にじさんじ 地道な取り組みが導いた “熱い夏”

ホロライブプロダクションの未来はどこにある

ホロライブプロダクションとカバー社は桐生ココのデビューをきっかけとする国内外への著しい波及により、今年2020年 (令和2年) から記録的大躍進を続けています。

それは所属タレントのチャンネル登録者数や同時視聴者接続数 (同接数)、スーパーチャット (投げ銭) 総額を猛烈に押し上げ、黎明期のいわゆる “四天王” (キズナアイ/輝夜月/ミライアカリ/電脳少女シロ/※バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさんは引退) のチャンネル登録者数上位独占時代を終わらせるほどのものであり、今や所属タレントが100名を超える大所帯のにじさんじと肩を並べるか、あわよくば凌ぐほどの勢いにまで至っています。

新型コロナウイルス感染症 (武漢肺炎/COVID-19) による巣ごもり需要を大いに取り込む事に成功。新人タレントもグループとしての強みを最大限発揮し成功。1月開催のライブイベントのスローガン「#とまらないホロライブ」の通り、一見、全てが順調―。

hololive 1st fes.『ノンストップ・ストーリー』(ホロライブプロダクション)

その急激な躍進に伴うひずみが、今回の一連の不祥事の数々として顕在化した形となっています。にじさんじのいちから社が地道に裏で行ってきた改善の取り組みや、業務拡大に伴う人員面への十分な対応などを怠ってきたツケがここに来て顕となってきました。

カバー社はいちから社とは異なり、批判を真摯に受け止め刷新していく経験も期間も無いままに、ここまで来てしまったのです。

今やホロライブプロダクションはVTuber業界における重要なプレーヤーであり、その存在と活動が他社との切磋琢磨の競争とムーブメントの拡大に大きな役割を果たしています。一方で現在、同事務所を運営するカバー社は、エンターテイメント系の事務所を運営する企業として退場を迫られる瀬戸際にまで追い詰められています。

カバー社への出資先の1つである「OLM1号ファンド」に名を連ねる以下大手企業も、「1つの中国」の原則を支持すると表明し国際政治に絡むリスクをもたらす企業をこのまま支え続けるとは必ずしも言い難いでしょう。

  • 株式会社IMAGICA GROUP
  • 株式会社オー・エル・エム
  • 株式会社アドウェイズ
  • 株式会社ジェイアール東日本企画
  • 株式会社小学館
  • 株式会社タカラトミー
  • 株式会社電通
  • 株式会社バンダイナムコホールディングス
  • 株式会社ミクシィ
  • SMBCベンチャーキャピタル株式会社
  • その他国内大手事業会社

株式会社オー・エル・エム・ベンチャーズ 出資約束金額約14億円でOLM1号ファンドの組成完了のお知らせ

PR TIMES

ホロライブプロダクションのカバー社 総額約7億円の資金調達を実施

仮にこのエンターテイメント系事務所の運営元として資質に疑義ある企業と共にホロライブプロダクションが姿を消す事となれば、今日のVTuber業界全体において計り知れない損失となりうる可能性があるでしょう。それだけ同事務所の存在は、今年大きく拡大しました。


今後、ホロライブプロダクションを正しい方向へと導く道はあるでしょうか。

同事務所及び所属タレントの活動・成長を今後も見守っていきたいという思いが確かであると信じる視聴者の皆さんの声が、カバー社への出資企業を動かす可能性はあるでしょうか。

それともカバー社が真に体制を改め、「1つの中国」への支持を撤回し、ホロライブプロダクションを運営するに相応しい企業として生まれ変わる道は今もあるでしょうか。

かみのしっぽはどこにある あまかけるふねのわすれもの

任天堂「MOTHER」より

ホロライブプロダクションの未来は、どこにあるでしょうか。

(文・アポロ船長)

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