VShojoの誤算? 日本の視聴者・ファンの”心象”読み誤る「みけねこ」飴宮なずな加入の影響

VShojoの誤算? 日本の視聴者・ファンの”心象”読み誤る「みけねこ」飴宮なずな加入の影響

VTuber事務所 VShojoの日本展開が苦戦しているのではないかという見方が浮上しております。

VShojoは2022年 (令和4年) 7月3日 (日本時間/現地:2日10時)、北米最大のアニメイベント「Anime Expo 2022」にて大型プロジェクト「VShojo NEXT」の発表を大々的に行い、日本向けグループ「VShojo Japan」設立と kson (kson総長) の加入及び、新人タレント 飴宮なずなを披露。この前にはJR秋葉原駅構内への広告展開を展開。イラストレーターの ななかぐら (VTuber カグラナナ) 氏や 元・いちから株式会社 (VTuberグループ にじさんじ運営/現 ANYCOLOR株式会社) COO (最高執行責任者) の岩永太貴 (愛称 いわながちゃん/株式会社yokaze 社長) 氏の参画も発表されるなど、日本での華々しいスタートを切ったかに見えました。

しかし、あれから1ヶ月余りが経ち、当初の熱狂は思いがけない仕切り直しを余儀なくされているように映ります。

VShojo kson・飴宮なずなのデビュー配信をTwitchにて7月17日に放送
画像引用元:プレスリリース
© VShojo, Inc.

“みけねこ” 飴宮なずな加入がもたらした忌避感

ksonと同時に VShojoに加入した新人タレント 飴宮なずなを巡っては、かつて ホロライブプロダクション所属タレント 潤羽るしあの演者/ボイスモデルを務めていたとされる みけねこ (無所属) ではないかとの憶測が拡散しておりました。

これは当初は憶測の域を出ないものでしたが、(初配信後に みけねこ側のチャンネルにて 飴宮なずなの配信画面が表示される出来事が発生するなど) 様々なエビデンスを踏まえた結果、現在では みけねこと 飴宮なずなは同一の演者/ボイスモデルであるとすることが適切であると考えられるに至っております。

みけねこ
画像引用元:YouTube
飴宮なずな Amemiya Nazuna
飴宮なずな
画像引用元:Twitter
© VShojo, Inc.

飴宮なずなの加入は、これまで同氏が引き起こしてきた数々の問題を持ってしても「配信の実力があるなら加入を拒まない」とするような米国企業らしい VShojoの寛容さ&再チャレンジを認めるポジティブな側面がうかがえますし、実際に英語圏ではそうした方向性にて成功を収めてきた実績もありましたが、これが「日本での展開」になると状況が変わってきます。

同氏の加入により、他社事務所・グループとのコラボレーションに制約がもたらされたことも痛手でしょう。契約上、おそらく他事務所・グループへの加入は特に問題ないと思われるとはいえ「契約解除から半年も経ていない”禊ぎが済んでいない”タレントを、ほとぼりが冷めないうちに加入させた」ようにも映るこの姿勢が、日本の視聴者・ファンにどの様に映るのか。それは想像するに難くないことでしょう。

もしかしたら VShojoは ksonと 飴宮なずなの加入による VShojo Japanの立ち上げ後、それまで ksonが個人活動時代に交流を持っていた日本の個人勢タレントの加入が続く流れを想定していたのかもしれません。現状の ホロライブプロダクション、にじさんじ、ぶいすぽっ!、774inc. 等といった既存事務所・グループの手法に与しない VShojoの「エージェンシー」という運営方針 (後述) が、近年相対的に苦戦傾向にある日本の個人勢タレントへの福音となるのではないかとも。

仮にそれが成功した場合、(日本国内の個人勢タレントの規模を鑑みれば) VShojoの存在感は最大で にじさんじ相当の規模にまで拡大する可能性はあったことでしょう。前述の既存事務所・グループに良い意味での拮抗感をもたらし、VTuber業界の更なる発展に大きな役割を果たせることでしょう。

しかしそれは、現時点では少し後退した可能性となっております。

運営体制への疑念 “企業事務所所属の個人勢”とは何なのか

そしてこの度、両者の加入による VShojoへの注目が一時高まったことが、一方で同事務所の運営体制への疑念を浮き彫りにさせる事にも繋がってきております。

VShojoは「エージェンシー」という“個人勢支援的形態”のタレント第1主義を標榜する米国発のVTuber事務所を自負しておりますが、これはチャンネルやキャラクターの権利、活動のあり方等をタレント個人に委ねるなど、所属タレントを”あくまで個人勢”として取り扱うというものとなっております。

しかし、この”企業事務所所属の個人勢“とは、果たして何なのか─。

日本の大手事務所・グループは所属タレントが個人事業主の形態が少なくありませんが、彼らの多くは”個人勢”ではなく”企業勢”として扱われます。それは事務所・グループがチャンネルやキャラクターの権利を保有していることもありますが、一方で過去の日本のVTuber業界におけるゲーム配信上の許諾有無や著作権、包括契約といった問題における適正化・透明化が行われてきた歴史の中でコンセンサスを得てきた「個人勢を抜け穴とした不正を認めない」考え方と言えます。

これは「ポケモン ダイパリメイク (ダイヤモンド・パール)」の開発元は「ILCA」なものの、社会的には「任天堂開発」のゲームソフトのように広く認識されるといったことと類似しているのかもしれません。

これらを鑑みると、日本市場では”企業事務所所属の個人勢”という考え方に厳しい視線が向けられるのは避けられないでしょう。あわよくば、ゲーム配信の許諾問題をクリアするための抜け穴と見られてしまう恐れすら懸念されるもので、現実にまず通用しにくいことでしょう。

現に VShojo所属タレントの”企業所属だが個人勢”という姿勢が抜け穴となり、海外の著作物に対するフェアユース思想に基づくような形で日本アニメの海賊版視聴配信などを行っていたという事実が、日本のVTuber視聴者・ファンからの不信を招くことに繋がっている可能性も否定しがたいことでしょう。

Nyatasha Nyanners (ニャターシャ・ニャンナーズ) による「ローゼンメイデン」海賊版視聴配信
© VShojo, Inc.

現在の VShojoは日本のVTuber業界が既に2年前に通り過ぎた「著作権や許諾といった問題」に十分対応出来ているとは言い難いでしょう。少なくとも日本では、企業事務所所属タレントは個人勢ではなく”企業勢”です。VShojoもチャンネルやキャラクターの権利や活動の裁量がタレント個人に委ねられているとはいえ、広く理解を得るための説明や軌道修正等をしない限り、日本の視聴者・ファンからの信頼を得ることは難しいことでしょう。

その他、VShojoの日本進出における課題には「Twitchメインのデメリット」も挙げられますが、それ以上に求められているのは「誠実さ」ではないかと思われます。

日本はVTuber誕生の地であると同時に、配信における法令遵守の必要性が比較的早く浮上したことで、タレント個人は勿論、事務所・グループにおいても「誠実さ」が求められる市場となりました。業界最大手の ホロライブプロダクションはゲームメーカー各社との包括契約を相次いで締結したほか、所属タレントの配信枠に必ず許諾情報を記述するようになっております。収益化を行わない形で個人向けガイドラインの適用条件をクリアする事務所・グループもあり、今や日本ではこうした姿勢が「誠実さ」を計る1つの指標となっております。

VShojoの日本進出の成否が、今後の日本のVTuber市場が更に発展するか否かを左右する大きなトピックである事には変わりありません。同事務所には (みけねこが演じているとされる) 飴宮なずなの加入や、個人勢としての位置付けによる活動の是非といった疑念に1つずつ誠実に対応していくことが求められることでしょう。

VShojo – A VTuber Company

公式サイト

(第2チーム/バーチャル・メタバース・VTuber・ボカロ・初音ミク情報)

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