一つの到達点迎えたスマブラ 任天堂はそろそろ桜井氏を自由にしてもよいのではないか

スマブラ」という言葉を聞いて、今や全く知らないというような方はほぼいないだろう。

任天堂とゲームメーカー各社のキャラクターが一同に介し、吹っ飛ばしあいの大乱闘を繰り広げる格闘アクションゲーム「大乱闘スマッシュブラザーズ」シリーズ。本作の開発指揮を執るのは「星のカービィ」シリーズの生みの親でもある桜井政博氏だ。

桜井氏はかつて故・岩田聡任天堂元社長が立て直したゲームメーカー・HAL研究所 (ハル研) に在籍、星のカービィシリーズやスマブラシリーズの大ヒットをきっかけに天才クリエイターとしてゲーム業界内で注目を集める存在となる。後にフリーとして株式会社ソラを立ち上げ独立するも、岩田氏とのよしみやスマブラ最新作がWiiにて開発中であるとする情報などを受け再び任天堂の現場 (スマブラシリーズ開発) へ復帰し今日に至る。

スマブラシリーズが一つの到達点を迎えた今、次に任天堂や桜井氏が向かうのは何処か。そして結果的にスマブラ開発に縛られた形でやってきた桜井氏はこの先、どのような選択肢を選ぶのだろうか。

肥大化・大作化するスマブラ

2018年 (平成30年) 12月7日に発売されたスマブラシリーズ最新作「大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL (スマブラSP) 」は過去作に参戦した全キャラクターに加え、更にメーカーやゲーム機の垣根をも越えて史上最多のファイター (参戦キャラクター) が揃う集大成的一本となっている。発売後もネット配信でキャラクターやステージが追加されたり新たなサービスが始まるなど、日々進化を続ける「大作」となっている。

それまでのスマブラ開発のノウハウが注ぎ込まれた完成度、セールス共に多くの人々から高い評価を得ている本作だが、一方で初代から続くシンプルな格闘アクションとしての「いつものスマブラ」として違和感無くプレイできるのも歴代ユーザーにとっては嬉しいところだ。新たなファイター、新たな要素、新たな遊び方等々…要求に応じて老舗旅館のように増築を繰り返しても「いつものスマブラ」を維持し続けるのは決して容易ではないし、バランス調整一つとっても膨大な作業に向き合うことになるはずだが、今回のスマブラもなんとかそれをクリアしてみせた。

しかし、もはや限界に来ているのではないか。スマブラの「肥大化」と「大作化」は既に行き着くところまで来たように映る。任天堂とコピーライターの糸井重里氏による「MOTHER」シリーズが過去に幾度と肥大化と大作化に直面して開発の中断を余儀なくされたりもしたように。歴代のシューティングゲームや格闘ゲームがコアユーザーの要望を次々受け入れマニア化し市場を失っていたように。このまま根本的対策や方針転換を行わず仮にも次回作を手掛けるようになるとするなら、その先にはスマブラという作品の「死」が待ち受けているのではないかと危惧する。

こうした懸念は前作「大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U & 3DS」、更にはそれ以前の「大乱闘スマッシュブラザーズX」でも囁かれていた。もっとファイターを。もっとステージを。もっと新要素を…という肥大化の流れ。ゲーム機プラットフォームの進化や新たなアイデアによって今後も新しいスマブラを構想することは可能だろう。だが桜井氏をはじめとするスマブラ開発陣がそれらを受け止め反映させ続けるのはもはや限界に来ているのではないだろうか。

そろそろ桜井氏を自由にしてもよいのでは

桜井氏は過去に任天堂の手前味噌であるハル研を離れ、他社からゲームソフトをリリースしたりゲーム業界関係者との交流を深めたりといった活動を行っていたことがある。雑誌「週刊ファミ通」で2019年 (令和元年) 9月現在も連載される「桜井政博のゲームについて思うこと」もその中から生まれたコラムであり、メーカーやゲーム機プラットフォームに縛られず語られるその内容は業界内で高い支持を得ている。

故・岩田聡任天堂元社長とのよしみから再び任天堂の現場に戻り、今日までスマブラシリーズを開発してきた桜井氏。その手腕と成果は最大限の賛辞を送って余りあるものだ。ゆえにスマブラが一つの到達点に辿り着いた今、任天堂はそろそろ桜井氏を自由にしてもよいのではないだろうか。

勿論これは「今後一切、任天堂やスマブラに携わらない」という意味では決して無い。ただ桜井氏の実力が業界内で高く評価されているからこそ、氏が任天堂やスマブラの枠内にとどまらない次元にまで羽ばたいていけるのだとしたら、それはゲーム業界全体にとって極めて大きな財産を生み出すことにも繋がっていく。ゆえに任天堂は今後は過度に桜井氏をスマブラに縛るのを止め、氏の思いの向くままに活動を行える選択の自由を認めてもよいのではないだろうか。

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