#とまらないホロライブ その先にあるもの

2020年 (令和2年) 2月現在、バーチャルYouTuber (VTuber) 業界を牽引する存在としていちから株式会社のVTuber/バーチャルライバー事務所「にじさんじ」と並び、カバー株式会社の「ホロライブプロダクション (以下:ホロライブ)」が注目を集めている。

今やにじさんじと同じく最前線に踊り立つ存在にまでなったホロライブだが、2019年 (平成31年/令和元年) 前半の時点ではにじさんじと比肩するほどの勢いとまでは言い難かった。その後急速に頭角を現し、今日にじさんじと肩を並べ切磋琢磨する存在となるまでに快進撃を演じるに至っている。特にここ半年あまりの大躍進は目覚ましく、その勢いは今日も「止まらない」。

にじさんじもホロライブも、かつて “四天王” と呼ばれたVTuberが率いる事務所・グループではない。しかし今日では “四天王” を完全に置き去りとし、更に歩みを止めない勢いでVTuber業界を牽引する存在にまで至っている。にじさんじは「野良犬の逆襲」「雑草魂」的ハングリー精神による叩き上げが原動力となったと目されるが、ホロライブもまた今日に至る様々なクロニクルを紡いできたのである。

にじさんじを見くびるな VTuber/ライバーの熾烈な競争とハングリー精神

今回はホロライブが「#とまらないホロライブ」のスローガンに至る “歩みを止めない姿勢を” 確立するまでの軌跡とこれからについて取り上げたい。

ホロライブ (hololive)

全ては「ときのそら」の “視聴者13人” から始まった

ホロライブの象徴的存在かつリーダー格として今日も最前線で活躍する「ときのそら」は、2017年 (平成29年) 9月 (YouTubeでは同年12月) にデビューしたVTuber業界でも黎明期を支えてきた「古参」と呼べる存在である。

しかしデビュー後すぐ注目されなかった事でいわゆる “四天王 (キズナアイ、輝夜月、ミライアカリ、電脳少女シロ、バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん)” には選ばれておらず、後述する “とあるキッカケ” が訪れるまでは影が薄い存在であった。今日の輝かしい姿からは想像し難い “下積み” も経ており、特に初の生放送配信の視聴者数 (同接数) が僅か13人であった事は語り草となっている。

そんなときのそらの状況が変わったのは、2017年 (平成29年) 末のある生放送配信が幸運にも多くの視聴者を集めたのがキッカケであった。そこでとあるユーザーが当時 “ネットスラング” として広まりを見せていたアニメ 「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のキャラクター「オルガ・イツカ」の台詞「止まるんじゃねえぞ…」をネタ交じりで彼女に教えた。

ときのそら「止まるんじゃねえぞ…」(画像:KAI-YOU)
ときのそら「止まるんじゃねえぞ…」(画像:KAI-YOU)

この時ときのそらは「止まるんじゃねえぞ…」「止まらねえぞ!」と返したが、これが今日の歩みを止めない「#とまらないホロライブ」の方向性にもつながっていくこととなるとは誰も予想し得なかったであろう。

“止まらない” 姿勢が花開いた

今日のホロライブのVTuberとしてのスタイルはにじさんじと同じく、Live2Dによる生放送配信が中心となっている。一定の人気を得た者から順に3DCG化を行っていくのも同じである。

だがキズナアイの「分裂」を巡る一連の問題でも浮き彫りとなったように、今日のVTuber業界では演者の実力が重視されるのがトレンドとなっている。この点においてホロライブはにじさんじとはまた異なる特徴を備えたキャラクター性を有するVTuberを (特に新人になればなるほど) 積極的に採用してきている。

直近では2019年 (令和元年) 12月28日にデビューした「桐生ココ」が大いに注目されており、単独VTuber生放送配信史上最高 (放送当時) となる最大4万4000人を集めたことが驚きを持って受け止められた。これまでのVTuberには無いバイリンガルを生かした人々を惹き付ける独特のトークスキル (電脳少女シロも複数言語を喋れるが、披露・活用の場は極めて少ない) はそれまでのホロライブやにじさんじとは異なる風を呼び込むものであり、ホロライブ全体の活性化にも多大な影響を及ぼしつつある。

今日のVTuber業界ではデビュー時より積み重ねたYouTubeの「チャンネル登録者数」ではなく、生放送配信における「同時視聴者数 (同接数)」のような直近の人気がダイレクトに現れる指数が重視されるようになってきている。もはや古参故の優位性は過去のものであり、桐生ココのような “大型新人” がデビュー僅かにして金字塔を打ち立てたり、更にそれを先輩・後輩VTuberが抜きつ抜かれつ切磋琢磨し更なる高みを目指すのも日常的光景と化しているのである。

この点においてホロライブはにじさんじとはまた異なるキャラクター性を有するVTuberをデビューさせ人気を博する事に成功している。「ゲーム部プロジェクト、キズナアイ、.LIVE アイドル部の崩壊」といった外的要因によって漁夫の利を得たように思われがちだが、にじさんじと比肩する存在にまで至る前から地道に下地作りを行い “止まらなかった” 事がここに来て一斉に花開いていると言えるのではないだろうか。

“止まらない物語” を歌おう

2020年 (令和2年) 1月24日、ホロライブ初の全体ライブ「hololive 1st fes. ノンストップ・ストーリー」が開催された。

hololive 1st fes.『ノンストップ・ストーリー』(ホロライブプロダクション)

ホロライブはライブ告知と時同じくして「#とまらないホロライブ」のハッシュタグを公開した。この “合言葉” を柱にライブ当日までの日々を盛り上げていく。そのメディア戦略は2019年 (令和元年) 後半のホロライブの急速な躍進を象徴するものであったといえよう。

そして1月24日の「止まらない物語」は、既報の通り大成功を収めた。

かつてネットスラングとしてときのそらに伝えられた「止まるんじゃねえぞ…」が、今やホロライブの「ノンストップ・ストーリー」「#とまらないホロライブ」「#とめてみろホロライブ」「#おわらないホロライブ」としてその方向性を照らし続けている。その奇妙な巡り合わせも今では幸運に思えてくるだろう。


ホロライブを運営するカバー株式会社は「分裂」を巡る問題を引き起こしたキズナアイの運営元・Activ8への出資で注目されたgumi社からの出資を受けている。

ゲーム部プロジェクトも、キズナアイも、.LIVE アイドル部も…少し前まで安泰であるかのような幻想を振りまいていた事を忘れてはならない。今後ホロライブやにじさんじが安泰である保証など何処にも無い。”見えない大人の事情” はすぐ側に横たわっており、内情が如何様であるかは外からは分からない。遅かれ早かれ、物語はいつか終わりが訪れる。そこに特別な根拠無き希望を抱くのは危ういものだろう。

隣の芝は青いが、いつまでも青いとは限らない。青く見えているだけか、もしくは青く見せているだけかもしれない…何があるか分からない。好意的に見つつも一歩引いた目を備えておきたい。

キズナアイ・.LIVE アイドル部の失墜 ホロライブ・にじさんじとの対比 歴史は繰り返すのか

キズナアイ「分裂」で注目集めるgumi社 VTuber関連企業出資先一覧

しかし人は過ちを繰り返す一方で学ぶことが出来る。数多くの作品が消えていった一方で長く人々に愛される存在を生み出してきたのも確かである。ディズニーやドラえもん、初音ミクが今も愛され続けるように。

この先何が起こるかは分からない。しかし確固たる方向性をもって歩み続ける限り、その先に道は開けていく。

ホロライブの “止まらない物語” の先にあるもの。それがVTuberムーブメントの現実に失望していた人々にとっての道標の1つとなる事を心から願いたい。

(文・アポロ船長)

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