任天堂の宮本茂代表取締役フェローはNikkei Asian Reviewのインタビューで、かつて自身が生み出した世界的人気キャラクター「マリオ」のこれからについて語りました。

(E3 2004 任天堂メディアブリーフィングより)
より自由で柔軟なマリオの姿を
宮本氏はマリオについて「創造的な方向性は変わってきている」と語り、長年マリオというキャラクターの「一定の一貫性」を維持するよう心がけてきた結果親しみある雰囲気を付加出来たものの、その後のエピソードで好きな食べ物を急に苦手にはなれないなど展開を制約してしまうような反省もあったとのことです。
そこで宮本氏は今後のマリオを厳格にキャストすることを避け、様々なキャラクターのあり方も自由に模索できるようにしたとのことで「より多くのお客さんが楽しめるためのより大きな機会を作ることに一層興味を抱くようになりました」と述べています。
これは現在の初音ミクのような「携わる人々によって様々な姿を見せてくれることで永続的存在へと発展していく」方向性にも通じるものであり、かつては漫画「スーパーマリオくん (作者:沢田ユキオ氏)」や1990年代に数多く出版されたゲーム4コマ漫画本 (双葉社「4コマまんが王国」、光文社「4コマギャグバトル」、旧エニックス「4コママンガ劇場」など) で様々な漫画家による個性的なマリオの姿が描かれてきました。
これらは2000年代より大幅に減少していくこととなりましたが、その背景にはマリオというキャラクターの「一定の一貫性」を維持するための任天堂による取り組みの影響もあったのかも知れません。
ミッキーマウス、ディズニーへの挑戦
そして宮本氏はこうした方向性によって「マリオを自分の死で終わりにしない」ことを目指すとともに、ミッキーマウスがウォルト・ディズニーの死後も活躍しているように世代を超えたクリエイターに受け継がれて欲しいとの想いを明かし、マリオがミッキーに立ち向かえる存在へと羽ばたいていけると信じている様子がうかがえます。
ただそれを達成するまではまだまだ長い道のりがあるとして、その高いハードルの1つに「多くの親は子供たちにビデオゲームを遊ばせないようにしたいと望んでいる」ことを挙げ、「これらの同じ親はディズニー映画を視聴することを許します」「親が任天堂をプレイしている子供たちに安心しない限り、私たちは真剣に挑戦することはできません」とし、一世紀近くを要して親を味方に付けたミッキーの手強さを語っています。
そして最後に「私たちがすでに創り出したものにはあまりこだわらず、世界中の人々に笑顔をもたらす新しいものを開発するつもりです」と締めくくっています。
ゲーム人口の拡大の”その先”へ
今回宮本氏が示したマリオに対する思いは、故・岩田聡元任天堂社長時代から始まりニンテンドーDSやWiiにて結実した「ゲーム人口拡大」の試みと、かつて柔軟なキャラクター造形が許容されていた時代のレガシーを踏まえたものであるとも考えられます。
今やマリオが世界的人気キャラクターであることを疑う人が殆どいない中でも、ミッキーマウスが到達したような次元に至るにはまだまだ長い道のりであるという戒めと、それに挑んでいく覚悟が強く伝わってくるようです。
Engadget
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