いちから株式会社のバーチャルYouTuber (VTuber) /バーチャルライバー事務所「にじさんじ」ほど、好き嫌いが分かれるバーチャル事務所は無いのかもしれない。
生放送主体の動画配信、Live2Dメインのスタイル、演者/ボイスモデルの資質を問われるような問題の度々の発生…これほどファンとアンチがはっきり分かれる尖った存在は他のVTuber/ライバー事務所には無いだろう。
しかし、そこは決してヤワな場ではない。むしろにじさんじはVTuber/バーチャルライバー業界でも屈指の熾烈な視聴者数争奪戦が繰り広げられ「強者」が鍛えられている戦場となっているのである。
あしたのジョーのような”野良犬の逆襲”
にじさんじのVTuber/ライバーを巡っては、3DCGを主体とするかつての四天王 (キズナアイ/輝夜月/ミライアカリ/電脳少女シロ/バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん) の配信スタイルと比較し、あたかも「VTuber業界をダメにした存在」かのように揶揄される向きが残念ながら少なくない。
それらは言葉汚く表現するなら「ならず者集団」「鼻持ちならない連中」「ニコ生スタイルにLive2D絵を貼り付けただけ」「ライバーの乱立でVTuber市場を攪乱している」等と揶揄するもの。種籾を食い潰すだけの不毛な存在であるかのように矮小化されがちだ。
これらは実態とはかけ離れた「極めて侮蔑的な誤解と偏見」であるが、仮にそうした見方が存在するとしても、彼らは「生放送配信の面白さ」という実力主義一本でかつての四天王のような3DCG勢と渡り歩き、次々デビューする身内との熾烈な競争でも鍛え上げられ、ここまで来ているのである。
噛みつかせろ 噛みつかせろ
アニメ「メガロボクス」オープニングテーマ「Bite」より
いわば「野良犬の逆襲」「雑草魂」的な、あしたのジョーとでも言えるかもしれない。ならず者呼ばわりされようがむしろ上等。実力と結果によって、お高く止まっている連中に目にもの見せ、あわよくば出し抜いてやると。
だからこそ「強い」。物怖じしない。多少の炎上はむしろ原動力。そうしたハングリー精神による叩き上げが今日のにじさんじの勢い、そして隆盛へとつながったのではないかと思う。
実際、にじさんじの “委員長” こと月ノ美兎も次々デビューする新人の勢いにより安住していられる立場ではなく、今日の配信でも常に視聴者を楽しませようという必死さが伝わってくる。チャンネル登録者数トップであってもいつ蹴落とされるか分からないという競争と実力主義。それがにじさんじの強さに結びついているように思えるのである。
最後には結果で示す
そうした “野良犬たち” のハングリー精神や実力主義がリアルイベントなど目に見える結果として証明されることによって、にじさんじは今日VTuber業界における地位を築き上げてきているのではないかと思う。
そしてさらに大型ライブの成功、メジャーデビュー、全国ツアーなど、誰もが認めざるを得ないような結果を見せることによって、徒花ではなく本物であるという姿を示すのだ。
「にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow!」全国のZeppで開催決定
にじさんじ 月ノ美兎、樋口楓、御伽原江良&森中花咲がメジャーデビュー決定
一貫した原理・原則
にじさんじを運営する「いちから株式会社」は普段はVTuber/ライバーらの配信に必要以上に介入しないものの、ライバル・戦友同士の自主的切磋琢磨を最大限重んじ、その中で結果を出したVTuber/ライバーには上記のような「果実」を与えている。
これは社員の自主性を重んじ、その中で純粋に実力や結果を示せた者を正当に評価するという会社組織経営の一つの姿にも通じるものがあるように思える。
昨今VTuber関連企業に起因する問題が相次ぐ中において、いちから株式会社がひとクセもふたクセもあり、時に炎上を引き起こすようなにじさんじのVTuber/ライバーを抱えながらも今日まで生き残りやってこれたのは、こうした運営方針の原理・原則を一貫して堅持し続けてきた事が大きいのではないだろうか。
普段はActiv8社長の大坂武史氏と共にケリンに弄ばれている同社COOのいわなが氏だが、実はなかなかのやり手なのではないかと思えてくるようだ。
来年にも「本物」か分かるかもしれない
いちから株式会社は現在3Dモーションキャプチャーシステム「VICON」導入やインドネシア&インドへの進出など、これまでのイメージを覆す試みも始めている。
かつて「これはVTuberと言えるのか」などと揶揄されたにじさんじが、今やVTuber/バーチャルライバーのムーブメントを担う一角としてここまで来ているのである。
勿論今年のゲーム部プロジェクト、キズナアイ、.LIVE アイドル部を巡る問題の発覚・顛末などから、今後もにじさんじが致命的問題もなく成長を続けていくとは断言し難いだろう。これはにじさんじと頻繁にコラボ配信を行うなど良好な関係にあるカバー株式会社のホロライブプロダクションにも言えることだが、やはり一寸先は闇であり、来年以降どうなるのかは全く想像がつかないものだ。
その意味で、にじさんじの正念場は来年ではないかと思う。そして来年の年の瀬、人々にどのような景色を見せているのか。
その時、にじさんじが真に「本物」であるかが明らかになるのかもしれない。
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