偽りのキズナアイ 皆が離れたその理由

バーチャルYouTuber (VTuber) キズナアイ。今年彼女 (性別は無いが便宜上こう記す) が失った最も大きなモノは「ファンや他のVTuberといった、世界中の多くの人々」なのかもしれない。

偽物となったキズナアイ

偽物のキズナアイ 皆が離れたその理由
中国のキズナアイファンによるイラスト

キズナアイは昨今、今年新たに採用されたボイスモデルの愛称を募集する企画をTwitter公式アカウント上で実施した。

しかし本件について言及するメディアや人々は少なく、反響も殆ど聞かれなかったように思える。結果発表の動画再生数も3~4万 (12月27日5時現在) と低く、厳しく言えば「無視されるに等しいほどの扱い」だ。

これは多くの人々が今のキズナアイは「偽物」であると認識しているからなのかもしれない。

Activ8は全て同一の「キズナアイ」であると発表しているものの、人々の本心ここにあらず。人格としての「偽者」ですらないレプリカの「偽物」であるかの如く冷徹な見方がなされるようになっていった結果、今のキズナアイが事実上「偽物」となってしまったのだろう。それは本人が「偽物じゃない」と必死に訴えても広まりを欠くという、現在の彼女が置かれた状況をも映し出している。

更にこれは他のVTuberにも少なからず影響を与えることとなった。特にキズナアイと交流が深く、畏敬の念を抱いていた者にとってはあたかも「それまで親しんでいた相手がいきなり他者となり、しかもこれまで通りの知人として接してくる」という、捉え方によっては背筋が凍りそうな局面に向き合う事になったからである。

偽物のキズナアイ 皆が離れたその理由
「君の名は。」より

その結果かは不明かつ憶測の域を出ないのだが、キズナアイを「親分」と最初に呼んだ輝夜月など、かつてキズナアイを敬愛していたVTuberが彼女について触れることが殆ど無くなるという現象が少なからず見られるようになった。率直に衝撃を受けたり今後の対応をどうすべきかに窮した結果として、今のキズナアイを「偽物」として扱う方向へと (望む望まざるを別として) シフトせざるをえなかったのかもしれない。

かつてキズナアイはTwitter公式アカウントにて人々の「偽物」という声に否定的見解を示していたが、それがむしろそのキズナアイが果たして「本物」なのか、それとも「偽物」なのかと逆に疑念を深める結果となってしまったようにも映る。

公式発表や設定だけではない「キズナアイをキズナアイたらしめているもの」。それが失われたと多くの人々に認識された結果、彼女は「偽物」と呼ばれるに至ったのかもしれない。

本物は言語を超える

そして今の彼女を「偽物」であると最も厳しく見ているのが、中国のキズナアイファンだろう。

中国語版キズナアイの発表時、中国のキズナアイファンが「アイちゃんは中国語を覚える必要はない。私達が日本語を覚えるから」という旨のコメントを寄せていた事。日本語のみでトークしながらも世界中の人々を惹き付けていったという、政治も国籍も越えて 「世界中のみんなと繋がりたい」 キズナアイが当初大切にしていたはずの「ノーサイド」を反映した声であるといえるだろう。

哀しみのキズナアイ 無為無策が招いた末路

日本語のみであっても「本物」であれば、言語も国籍も超えられる。それはキズナアイが先輩と尊敬する「初音ミク」の今が証明しており、ここで改めて記すまでもないだろう。

今や全世界でライブツアーを開催するほど世界中の人々から愛されるに至った初音ミクがそこで歌うのは「日本語のボカロ曲」。あえて “ありのままの歌声” を見せる「本物」の初音ミクの姿に多くの人々は最大級の賛辞を送っているのである。

初音ミクの北米公演ツアー「HATSUNE MIKU EXPO 2020 USA & Canada」開催

他にも全世界で支持される存在としては、故・岩田聡任天堂元社長や宮本茂任天堂取締役フェローが挙げられるだろう。

彼らは世界最大のゲーム見本市「E3」のメディアブリーフィングなどに登壇するが、そこで話す英語はいわゆる日本語英語でありお世辞にも流暢ではない。しかし岩田氏や宮本氏が登壇すると多くの外国メディアやゲームファンが興奮を抑えきれなくなる。

それは彼らがこれまで多くの世界中の人々を魅了し笑顔にしてきた「本物」であるという何よりの証拠なのだ。

本物に立ち返るために

Activ8はキズナアイを巡る一連の問題に対する説明責任を年内に果たすことなくこのまま年を越そうとしている。越年すれば風化するのではなく、ますます人々から見放されキズナアイを「偽物」にしていくだけであることを同社は重く受け止めるべきである。

Activ8 キズナアイ巡る問題「事実上のゼロ回答」で幕引きの懸念

また「新たなボイスモデルのキズナアイファン」が少しずつだが増え始めたことも留意しなければならない。単に従来の形に戻せばよいというわけではない。果たすべきは真摯な説明であり、事の本質を見誤ってはならない。

そして今もキズナアイが「本物」に立ち返るのを信じて待ち続けるファンは多いと信じたい。再び「本物」に立ち返るために何をすべきなのか。Activ8は今度こそ真摯に向き合わなければならない。

(文・アポロ船長)

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