孤立無援のキズナアイ「VTuberではなくなる」日

バーチャルYouTuber (VTuber) キズナアイに対して久しぶりに多くの人々が振り向いてくれたそのニュースは、運営元のActiv8が6億7500万円の赤字、利益剰余金が7億2000万円のマイナスに追い込まれているという一報であった。

キズナアイなど運営のActiv8 2019年8月期決算は6億7500万円の最終赤字

「偽物」という民意

だれに はなしているのだ。

「MOTHER2 ギーグの逆襲」より

いわゆる「分裂」を巡る問題以降のキズナアイは、他のVTuberからもファンからも離れられ、まるで1人 (正確には4人だが) 壁に向かって話をし続けているかのような “孤立感” を漂わせている。

ほぼ分裂後のボイスモデルで埋まりつつある新着動画の再生数は低く、Twitter公式アカウントに対するリツイートやいいね数も減少した。多くの人々がキズナアイを見限っているか、フォローしたいながらも下手に触れる事が出来ず傍観姿勢にあるように映る。

新ボイスモデルに愛称を付けたようだが広まっている様子はさほど見られないし、むしろ使いたいとも思われていないのかもしれない。これまでと異なる声、異なる人格が新着動画内で何かしら空元気で喋っている。これまでにない新ボイスへのファンも一定数生み出してはいるものの、その絶対数の少なさは公式アカウントへのリツイートやいいね数、動画再生数が物語る。親近感よりも「偽物」であるという胸の奥からの感情を嫌になるほど刺激してくるそれに愛称を用いたいとは思わないし、その声その人格を目に耳にしたくないという拒否反応をも招いているかのようである。

これらはActiv8がキズナアイの「分裂」という選択とそれを巡る様々な問題から逃げ続けた事を経て人々から下された、「偽物である」という「民意」と言えるのではないかと思う。

現在進行形で問題を生み出し続けている .LIVE アイドル部よりも、人々が去っている。従業員を人として扱わないブラック企業経営者の発言など清々しいほどのアウトローはむしろ熱狂的支持者を生み出すこともあるし、特にアイドル路線とその結束を標榜するコンテンツ (NGT48事件やアイドルマスター9.18事件など) ではそれを守ろうとする根強い「肯定者」も出てきたりするものだが…Activ8はアップランドほどの “負のベクトル” にも振り切れていなかったということだろうか。

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「VTuberではなくなる」日

そしてキズナアイは今年中にも、単に忘れ去られる、引退するといった以上に残酷な段階…現在の「偽物」という見方から「VTuberではない」扱いにまで至ってしまう可能性すらあるかもしれない。

初めてVTuberを名乗り鮮烈に登場したキズナアイが、VTuberとして扱われなくなる。俄には想像し難いそのような未来は既に、すぐ近くまで来ているのではないだろうか。

それは2020年 (令和2月) 2月現在、企業系VTuber事務所として主に「にじさんじ」と「ホロライブプロダクション」が存在感を高めてきている事が大きな意味を持つ。

キズナアイのような “VTuber=YouTuberとしての動画配信者” の定義を覆す生放送配信を中心とする「ライバー」形式、3DCGより先ずはLive2Dによるキャラクター造形、その分演者自身のトークなどの実力が問われる「ニコニコ生放送」的スタイル、スーパーチャットなどによる収益性、「カルロス・ゴーン vs. 御伽原江良 生放送配信視聴者数対決」のような話題性を掻き立てるネタ、「#とまらないホロライブ」などのメディア戦略…。

それらはキズナアイをはじめとする、今や死語となりつつある「VTuber四天王」が健在であった頃は大いに賛否を巻き起こし、「VTuber市場を破壊する焼き畑商法」「バーチャルキャバクラ」等といった批判も招いたが、今やVTuberの新たなスタイルの1つとして支持を集め、リアルライブイベントやメジャーデビューなどといった目に見える結果を残し、今日に至っている。そして今や海外にも羽ばたいている。

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一方で「ヒメヒナ (田中ヒメ/鈴木ヒナ)」や「おめがシスターズ (おめシス)」など従前のスタイルを堅持しながら今も存在感を放ち続けるVTuberは少なくない。「名取さな」など比較的古参の個人勢からもリアルイベント開催を見据える者などが出てきている。

こうした事実は決して軽んじるべきではないし、そうした新たなスタイルの「後輩」が次々頭角を現す中で先輩として最前線を走り続けられなかった結果が、今日のキズナアイをはじめとする「四天王」の今であると思える。生放送配信スタイルが広まった事は言い訳にしかならないだろうし、キズナアイのような企業系VTuberであれば尚の事だろう。

そしてこうした動きこそが、キズナアイをあたかも (VTuberとしては) 終わったかのような存在…「VTuberではなくなる日」を急速に近づけているようにも思えるのだ。


単に引退や運営会社が消えるといった、それ以上の哀しみへのカウントダウンが終わる時。

このまま行けば、「その日」が訪れるのかもしれない。

(文・アポロ船長)

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