.LIVE アイドル部が狙うターゲット

株式会社アップランドが主宰するバーチャルYouTuber (VTuber) プロダクション「.LIVE (ドットライブ) 」が、立ち上げから一年余りという短期間で目覚ましい躍進を果たしている。

.LIVEはキズナアイが顔となっていたVTuberムーブメントの構図にパラダイムシフトを巻き起こした。かつて “四天王” と称された一角の電脳少女シロが昨今のキズナアイを上回る勢いを得るに至った。 特に2018年 (平成30年) 5月より始動したVTuber 12人による「アイドル部」の勢いは凄まじく、テレビ朝日系列「超人女子戦士 ガリベンガーV」の放送開始・レビュラー出演によってポテンシャルの高さが証明され、今や.LIVEの顔を務める電脳少女シロと切磋琢磨するほどになっている。

今回は.LIVE アイドル部躍進の原動力となり、今もアップランド社が狙っていると考えられる「見捨てられたコア層」について探っていく。

.LIVE 所属タレント

コアファン層という「地盤固め」

.LIVEの躍進は一見、大多数のライトユーザーを獲得する方向性とは逆のコア層を形成するためのアプローチによる「地盤固め」が行われたように映る。

.LIVEはアイドル部を中心に「内輪のコミュニティ空間形成」…他社VTuberとの広範なコラボレーションよりTwitterにおけるアイドル部メンバー同士の親密なコミュニケーションなどを重視した。どっぷりハマるファンにとって極めて居心地の良い「内輪のコミュニティ空間」をいち早く作り上げたのである。

その上で「ガリベンガーV」などのテレビ番組出演やライブイベントなどに見られるアイドル部メンバーの「成長」を明確に見せる事によって、コアなファン層の「提供した応援や対価に対するギフト」という一種の”承認欲求”をも十分に満たす。それは常識的には割高と目されるチケット料や公式グッズをも受け入れてくれるファン層をガッチリ固める事に繋がり、多少の事では倒れない「地盤」「組織」となっていく。

.LIVE(どっとライブ) グッズ

BOOTH

「内輪のコミュニティ空間」による濃いコンテンツと、それを支える姿勢を持った可処分所得的にも高いポテンシャルを誇るコアなファン層。.LIVEはこの一年余りで、こうした層を一定数惹き付ける事に成功しているのだ。

では.LIVEはこのような層を、一体どのように惹き寄せたのだろうか。

「見捨てられたコア層」をいつの間に

このような層を一般のライトユーザーが多く集うコンテンツに求めるのは厳しい。「ドラゴンボール」「ワンピース」などといった極めて多くの人々が支持する国民的作品や当初コア層を起点に一般にも波及していった作品 (NHK紅白歌合戦にも出演を果たした「刀剣乱舞」「ラブライブ!」など) ではそうした層が現役でその作品を追い続けている中にあり、それらを無理に獲得しようとするのは反対に軋轢を生むだけで得策とは言えない。

また「FGO (フェイト グランドオーダー)」のような現時点でコア層がガッチリ支持を固める作品も、現役でその作品を追い続けている層が多く同様である。

いずれにしても現時点で現役であり支持も厚いコンテンツに手を出していくのは良くない選択といえる。

一方、現時点において将来的展開への先行きが不透明かつそれまで支持してきたコア層をも不満・不安を抱えている。一方で一度ハマったコンテンツは親身に支えてくれる…実はそうした漂流気味にあるファン層を抱える中位のコアコンテンツがある。バンダイナムコエンターテインメント、サイゲームスなどが展開する「アイドルマスター」の一部シリーズである。

この主にコアファン層向けのコンテンツは度重なる展開方針の転換によりシリーズもファン層も分かれた状態にあり将来性にも疑問符が灯る。特にかつて同作品を「富裕層と言っても良いほどの資金力」で支えてきた初代シリーズ系 (スマホアプリ系ではないアイドルマスター本シリーズ。以下「前述作品」と呼称) のコア層は一般的にも広く報じられた「9.18事件」などで傷つき、その後衰退の憂き目に遭い、声優陣の高齢化などで新規展開の見込みも薄まり、事実上「見捨てられた状態」に近い現実がある。 いわば不満・不安を抱えながら「移行先」も見当たらず宙に浮いた形で漂流している難民に近い層ともいえるのかもしれない。

9.18事件て何よ

「インターネットを中心に近年稀に見る大炎上が発生、更に公式による燃料投下が加わり、NHKニュースで報道されるに至る大事件に発展した」

もしかしたらアップランド社は密かに、この「見捨てられたコア層」とも形容されるかもしれない層を取り込もうと仕掛けている可能性があるのかもしれない。それはアイドル部の様々な展開からも窺い知ることが出来る。

2019年 (令和元年) 9月1日現在までのアイドル部の展開を振り返ると、前述したコアファン層が興味を惹きそうな仕掛けが数多く見受けられる。

ファン発のアイコンの創出

初期のアイドル部において話題を集めたものの一つとして、各メンバーの発言や服装等から視聴者サイドがネタなどのアイコンを創出し、新たなメンバーの魅力となっていくスタイルがある。これはかつて前述作品のファンコミュニティーにて存在したものと近く、こうしたコアファン層にとって強く惹かれ親近感を抱く方向へと作用したものと考えられる。

内輪のコミュニティ空間形成

アイドル部は他社VTuberとの広範なコラボレーションよりTwitterにおけるアイドル部メンバー同士の親密なコミュニケーションなどを重視している。どっぷりハマるファンにとって極めて居心地の良い「内輪のコミュニティ空間」はかつての前述作品のファンコミュニティーにも存在したものである。

共に成長していく感

こうしてファンと共に成長してきたアイドル部メンバーが「ガリベンガーV」などのテレビ番組やライブイベントなどでその「成長」を見せてくれる。するとますますメンバーらを応援したくなる。いわば地下アイドルを応援するファンのような気持ちであり、それはかつて前述作品のファンが堪能していたそれと通じるものでもある。

コア層の土台の上に

こうして.LIVE、とりわけアイドル部はかつて盛り上がりを見せた他コンテンツを支えていた層を強く惹き付けるような仕掛けを数多く展開した結果、今や常識的には割高と目されるチケット料や公式グッズをも受け入れてくれるコアなファン層をガッチリ固める事に繋がり、多少の事では倒れない「地盤」「組織」となりつつあるのではないかと考えることも出来るかもしれない。

しかしアップランド社はこうした.LIVEおよびアイドル部の成功に安住してはいられないだろう。今やキズナアイを運営するActiv8社をはじめ、VTuber関連企業の事業展開を巡る視聴者・ファンとの間の信頼関係には厳しい視線が注がれている。一つ選択を誤れば瞬く間に瓦解する。それは「9.18事件」を引き金にその後衰退の憂き目に遭った前述作品を出すまでもない。

またコアファン層からの支持だけではなく、その土台の上により多くの一般ユーザーにも目を向けてもらえる試みを仕掛けるなど、更なる新たな景色を見に行く姿勢も示せるかが期待される。特に地上波テレビ放送で成功を収めた「ガリベンガーV」は一般ユーザーをVTuberムーブメントへと誘う存在としても大きな可能性を秘めている。このプラットフォームを今後も最大限活かしていってほしいところだ。

(文:一般投書者)

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